土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて 平成十一年三月三十一日付け法務省民四第六五〇号民事局第四課長通知

土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて
平成十一年三月三十一日付け法務省民四第六五〇号民事局第四課長通知

(通知)土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律(平成一一年法律第二四号。以下「改正法」という。)が本月三一日から施行されることとなったが、これに伴う商業登記事務の取扱いについては、下記の点に留意し、事務処理に遺憾のないよう、この旨貴管下登記官に周知方取り計らい願います。
 なお、本通知中、「土地再評価法」とあるのは、土地の再評価に関する法律を、「消却特例法」とあるのは、株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律をそれぞれいい、引用する条文は、すべて改正後のものである。

一 再評価差額金をもってする株式の消却
消却特例法第二条第五号に規定する公開会社は、商法第二一二条ノニの特例として、定款をもって、経済情勢、当該会社の業務又は財産の状況その他の事情を勘案して特に必要があると認めるときは、取締役会の決議により再評価差額金をもってその株式を買い受けて消却することができる旨を定めることができることとされた(土地再評価法八条の二第一項)。
  この場合の定款の定めにおいては、その定めをした日後において取締役会の決議により再評価差額金をもって買い受けて消却することができる株式の総数及び取得価額の総額を定めなければならない(土地再評価法八条の二第三項、消却特例法三条の二第二項)。その株式の取得価額の総額は、再評価差額金の額から土地再評価法第三条第一項の規定による再評価を行った時の再評価差額金の額(土地再評価法第八条第一項又は第二項の規定により取り崩した再評価差額金があるときは、その額を控除した額。以下同じ。)の三分の一に相当する額を控除した額を超えることができない(土地再評価法八条の二第三項、消却特例法三条の二第三項)。
  なお、再評価差額金をもってする株式の消却については、消却特例法第三条第三項の規定は準用されないので、消却する株式の総数は、発行済株式の総数の一〇分の一を超えても差し支えない。

二 再評価差額金をもってする株式の消却の手続
(1) 取締役会の決議
上記一の定款の定めに基づき、再評価差額金をもって株式の消却を行うには、取締役会において、再評価差額金をもって買い受けて消却すべき株式の種類、数及び取得価額の総額を決議しなければならない(土地再評価法八条の二第三項、消却特例法三条の二第四項)。この決議により買い受けることができる株式の取得価額の総額は、再評価差額金の額から土地再評価法第三条第一項の規定による再評価を行った時の再評価差額金の額の三分の一に相当する金額を控除した額を超えることができない(土地再評価法八条の二第三項、消却特例法三条の二第五項)。
(2) 株式の消却
会社が株式を買い受けたときは、遅滞なく株式失効の手続をしなければならない(土地再評価法八条の二第三項、消却特例法五条一項)。
  なお、この手続は、平成一三年三月三一日までの間に行わなければならない(土地再評価法八条の二第二項)。

三 再評価差額金をもってする株式の消却による変更の登記
(1) 登記の事由及び登記すべき事項
登記の事由は、「消却特例法による株式の消却」等と区別するため、「再評価差額金をもってする株式の消却」とする。
  登記すべき事項は、「発行済株式の総数」及び「発行する株式の総数」並びに数種の株式を発行している場合には「発行済各種の株式の数」及び「発行する各種の株式の数」につき変更を生じた旨並びにその年月日であり、この場合の変更の年月日は、株式失効の手続を行った日である。
  取締役会において再評価差額金をもって自己株式を買い受けて消却することが決議された場合は、決議された株式の総数及び取得価額の総額の範囲内で、当該決議後最初の定時総会の終結の時まで適宜自己株式を買い受けることができ、買い受けた自己株式は、遅滞なく消却されることになるので、再評価差額金をもってする株式の消却による変更の登記は、 買い受けた自己株式を消却した都度、申請すべきこととなる。
(2) 添付書面
申請書に添付すべき書面は、取締役会議事録(商業登記法七九条一項)、定款(商業登記規則八二条一項)、再評価差額金の存在を証する書面(土地再評価法八条の二第四項)及び代理人により申請をする場合にはその権限を証する書面(商業登記法第一八条)である。
(3) 登記の記載
登記の記載は、消却特例法による株式の消却による変更の登記等と同様である。

四 その他
 再評価差額金をもってする株式の消却は、平成一三年三月三一日までの間に限り行うことができる(土地再評価法八条の二第二項)。したがって、同日以前に行われた再評価差額金をもってする株式の消却による変更の登記は、同年四月一日以降に申請された場合であっても、受理することができる。
  再評価差額金をもってする株式の消却による変更の登記は、会社が買い受けた自己株式を消却した都度申請されることとなるので、資本の減少を伴わない発行済株式の総数の減少の登記等が既にされている会社については、当該申請により減少する登記簿上の発行済 株式の総数が取締役会で決議された株式の総数の範囲内であることを確認することができない場合もあり得るが、登記申請書及び添付書面から、当該株式の消却が取締役会で決議された株式の総数を超えて行われたことが明らかである場合を除き、受理して差し支えな い。
  なお、土地再評価法第八条の二第一項の定款の定めは、商法第一八八条第二項第三号により登記すべき事項とされている同法第一七五条第二項第六号の「株主二配当スベキ利益ヲ以テ株式ヲ消却スベキコト」の定めには該当しないので、これを登記する必要はない。