産業活力再生特別措置法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて 平成十一年九月三十日付け法務省民四第二一〇八号民事局第四課長通知

産業活力再生特別措置法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて
平成十一年九月三十日付け法務省民四第二一〇八号民事局第四課長通知

(通知)産業活力再生特別措置法(平成一一年法律第一三一号。以下「法」という。)が本年一〇月一日から施行されることとなったが、これに伴う商業登記事務の取扱いについては、下記の点に留意し、事務処理に遺憾のないよう、この旨貴管下登記官に周知方取り計らわれたい。
  なお、本通知中、「商登法」とあるのは商業登記法をいうものとする。

第一 主務大臣による事業再構築計画等の認定

一 主務大臣による事業再構築計画の認定
  事業者は、その実施しようとする事業再構築に関する計画(以下「事業再構築計画」という。)を作成し、平成一五年三月三一日までに主務大臣に提出して、その認定を受けることができることとされた(法三条一項)。事業再構築計画には、当該事業者の 事業再構築のために行うものであって、当該事業再構築の実施の円滑化を図るものとして主務省令で定める要件に該当する関係事業者(以下「特定関係事業者」という。)が行う措置に関する計画を含めることができることとされた(法三条五項)。

二 主務大臣による活用事業計画の認定
  一の認定を受けた事業者(以下「認定事業者」と いう。)の経営資源であって、当該認定事業者が一の認定に係る事業再構築計画に従って事業再構築を実施することによっても有効に活用することができないものがある場合において、これを活用して事業を行おうとする者(以下「活用事業者」という。) は、当該事業に関する計画(以下「活用事業計画」) を作成し、平成一五年三月三一日までに主務大臣に提出して、その認定を受けることができることとさ れた(法六条一項)。
  活用事業計画には、当該活用事業が、認定事業者から事業の全部又は一部を譲り受けこれを継続して実施しようとする事業者であって当該認定事業者の役員又は従業員であった者がその経営について相当程度の支配力を有するものとして主務省令で定める要件に該当するもの(以下「特定活用事業者」という。)によって行われるものである旨を記載することができる(法六条三項)。

第二 現物出資等における検査役調査に関する特例

一 設立の際の検査役調査の特例
 認定事業者であって株式会社であるもの(以下 「会社」という。)が、認定事業再構築計画に従ってその財産の全部又は一部を出資し、又は譲渡することにより新たに会社を設立する場合であって、当該会社が(当該会社が二以上である場合にあっては、当該会社が合算して)当該新たに設立される会社の発行済株式総数の過半数の株式をその設立と同時に取得することとなる場合において、当該新たに設立される会社の取締役(募集設立の場合は、当該新たに設立される会社の発起人は、定款に定めた現物出資又は財産引受け(商法一六八条一項五号、六号。 以下「現物出資等」という。)に関する事項が相当であることの証明を受けるため、弁護士、公認会計士又は監査法人にこれらの事項を調査させるときは、当該調査を実施させることができる旨の認定を主務大臣から受けることができることとされた(法八条一項前段)。この場合において、当該認定を受けて実施した調査の結果として現物出資等に関する事項が相当である旨の証明がたされた場合は、当該現物出資等に関する事項について、検査役の検査を受けることを要しないこととされた(法八条一項後段)。
  この主務大臣の認定を受けた者は、当該認定に係る調査による証明を受けたこと等を主務大臣に報告しなければならないこととされた(法八条四項前段)。 この場合において、当該主務大臣は、当該認定に係る調査による証明を不当と認めるときは、当該報告を受けてから二週間以内に限り、当該認定を取り消すことができることとされた(法八条四項後段)。

二 検査役調査の特例に係る設立の登記
(1) 登記期間等
  発起設立の場合は、検査役の設立経過の調査報告が完了した日又は取締役及び監査役の調査手続を終了し、法第八条第四項の規定による主務大臣に対する報告後二週間を経過した日から、募集設立の場合は、創立総会終結の日(もし創立総会が 商法第一六八条第一項に掲げる事項に変更を加えたときは、これに関する手続が終了した日(商法一八五条))から、本店の所在地においては二週間内に、支店の所在地においては、本店の所在地における登記後二週間内に設立の登記をしなければならない(法八条五項、商登法一八八条一項、 三項、六四条二項)。
(2) 添付書類
  一の主務大臣の認定に係る調査による証明を受けた場合の設立登記の申請書に添付すべき書類は、 商登法第八○条各号に掲げる書類、代理人により申請をする場合にはその権限を証する書面(商登法一八条)、代表取締役の選任に関する取締役会の議事録(商登法七九条一項)のほか、法第八条第一項前段の主務大臣の認定を受けたこと及び当該認定が取消しを受けていないことを証する当該主務大臣の書面並びに当該認定に係る調査による証明を受けたことを証する書面(法八条一一項)とされた。 なお、これらの書類のうち、当該認定に係る調査による証明を受けたことを証する書面とは、法 第八条第一項前段の主務大臣の認定により、弁護士、公認会計士又は監査法人が現物出資等に関する事項の調査を行った結果、当該現物出資等に関する事項が相当である旨の証明書である(法八条一項後段、同条四項) 。

三 新株発行の際の検査役の調査の特例
 会社が(当該会社が二以上である場合にあっては、当該会社が合算して)他の会社の株式の総数の過半数の株式を有する場合であって、当該会社が認定事業再構築計画に従ってその財産の全部又は一部を当該他の会社に出資する場合において、当該他の会社の取締役は、新株発行事項に関する取締役会(定款に株主総会がこれを決する旨の定めがあるときは、株主総会)の決議で定めた現物出資に関する事項(商法二八〇条ノニ第一項三号)が相当であることの証明を受けるため、弁護士、公認会計士又は監査法人にこれらの事項を調査させるときは、当該調査 を実施させることができる旨の認定を主務大臣から受けることができることとされた(法八条二項前段、一項前段)。この場合において、当該認定を受けて実施した調査の結果として現物出資に関する事項が相当である旨の証明がなされた場合は、検査役の調査を受けることを要しないこととされた(法八条二項後段、一項後段)。
  この主務大臣の認定を受けた者は、当該認定に係る調査による証明を受けたこと等を主務大臣に報告しなければならないこととされた(法八条四項前段)。この場合において、主務大臣は、当該認定に係る調査による証明を不当と認めるときは、当該報告を受けてから二週間以内に限り、当該認定を取り消すことができる(法八条四項)。

四 検査役調査の特例に係る新株発行による変更の登記の申請書の添付書類
  二の主務大臣の認定に係る調査による証明を受けた場合の新株発行による変更の登記の申請書に添付すべき書類は、商登法第八二条に掲げる書類(同条 第二号に掲げる検査役の調査報告書及び第三号に掲げる書面を除く。)、代理人により申請をする場合にはその権限を証する書面(商登法一八条)、新株発行に関する取締役会又は株主総会の議事録(商登法七九条一項)のほか、法第八条第二項において準用する同条第一項前段の主務大臣の認定を受けたこと及び当該認定が取消しを受けていないことを証する当該主務大臣の書面及び当該認定に係る調査による証明を受けたことを証する書面(法八条一二項)とされた。
  なお、当該認定に係る調査による証明を受けたことを証する書面は、二(2)で添付すべき書面と同様である。

第三 新株の引受権の付与の特例

一 認定事業者の新株の引受権の付与の特例
  認定事業者である会社が、認定事業再構築計画に従って特定関係事業者とともに事業再構築のための措置を行う場合には、当該会社は、取締役又は使用人のほか、当該特定関係事業者の取締役又は使用人にも商法第二八〇条ノ一九第一項の新株の引受権を 与えることができるとされた(法九条一項)。
  この場合において、会社が定款に取締役若しくは使用人又は当該特定関係事業者の取締役若しくは使用人に対する商法第二八○条の一九第一項の新株の引受権の付与に関する規定の登記の申請書には、認定事業者である旨及び認定事業再構築計画の内容を証する主務大臣の書面(法九条二項)をも添付しなければならないものとされた。

二 特定認定活用事業者の新株の引受権の付与の特例
  認定活用事業者であって法第六条第三項に規定する特定活用事業者(以下「特定認定活用事業老」という。)である会社が、取締役又は使用人に商法第二八〇条ノ一九第一項の新株の引受権を与える場合に、新株の引受権の付与に関する株主総会の特別決議(以下「付与決議」という。)で定める新株の引受権の目的である株式の総数は、当該付与決議以前の株主総会の決議で定められた新株の引受権の目的である株式であって発行されていないものの数と併せて、発行済株式の総数の四分の一を超えない範囲で与えることができるとされた(法九条三項)。
  この場合の新株の引受権の行使により発行すべき株式の登記の申請書には、特定認定活用事業者であることを証する主務大臣の書面(法九条三項後段)をも添付しなければならないこととされた。

第四 議決権のない株式の発行の特例

一 特定認定活用事業者の議決権のない株式の発行の特例
  特定認定活用事業者が商法第二四二条第一項の規定による議決権のない株式を発行する場合は、議決権のない株式の総数は、発行済株式の総数の二分の一を超えない範囲まで発行できることとされた(法一二条前段)。
  この場合の新株発行による変更の登記の申請書には、特定認定活用事業者であることを証する書面を も添付しなければならないこととされた(法一二条後段)。

二 債務の株式化の場合の議決権のない株式の発行の特例
  認定事業者のうち認定事業再構築計画に従って自らの債務を消滅させるために債権者に対して株式を発行するものであって、当該株式の発行について債権者との間に合意を有することその他の主務省令で定める要件に該当する旨の認定を主務大臣から受けたものが、当該株式の発行として商法第二四二条第一項に規定する議決権のない株式を発行する場合においては、発行済株式の総数の二分の一まで発行できることとされた(法一三条前段)。
  この場合の新株発行による変更の登記の申請書には、法第一三条に規定する主務省令で定める要件に該当する旨の主務大臣の認定を受けたことを証する書面をも添付しなければならないこととされた(法一三条後段)。