中小企業団体の組織に関する法律の一部改正に伴う登記事務の取扱いについて 平成十二年三月一日付け法務省民四第五四四号法務局長、地方法務局長あて民事局長通達

中小企業団体の組織に関する法律の一部改正に伴う登記事務の取扱いについて
平成十二年三月一日付け法務省民四第五四四号法務局長、地方法務局長あて民事局長通達

(通達)中小企業の事業活動の活性化等のための中小企業関係法律の一部を改正する法律(平成一一年法律第二二二号。以下「中小企業改正法」という。)中の中小企業団体の組織に関する法律(平成七年法律第四七号。以下「中小企業団体法」という。)の改正に関する規定が本年三月二日から施行されることとなったが、これに伴う登記事務の取扱いについては、下記の点に留意し、事務処理に遺憾のないよう、この旨貴管下登記官に周知方取り計らわれたい。

一 趣旨

 中小企業改正法により、中小企業団体法が改正され、事業協同組合、企業組合又は協業組合(以下「組合」 という。)から株式会社又は有限会社(以下「会社」という。)への組織変更を可能とする規定が創設された。
  組合は、その組織を変更し、会社になることができることとされた(中小企業団体法一〇〇条の三)。
  組織変更は、組織変更によって設立された会社がその本店所在地において設立の登記をすることにより効力を生ずる(中小企業団体法一〇〇条の一二)。

二 組織変更の手続

(1)組織変更計画書の作成及び承認
 組合が会社に組織変更をするには、組織変更計画書を作成し、総会の議決を受けなければならない(中小企業団体法一〇〇条の四第一項)。この議決は、事業協同組合及び企業組合については中小企業等協同組合法第五三条に規定する議決に、協業組合については中小企業団体法第五条の一九第一項に規定する議決によらなければならず(中小企業団体法一〇〇条の四第三項)、定款その他会社の組織に必要な事項を定めるとともに、組織変更後の会社の取締役及び監査役となるべき者を選任しなければならない(中小企業団体法一〇〇条の四第二項)。
  なお、総代会においては、協同組合法第五五条第 六項の規定にかかわらず、組織変更について議決できない(中小企業団体法一〇〇条の四第四項)。

(2)組織変更の議決の公告
 組合が組織変更の議決を行ったときは、当該議決の日から二週間以内に、議決の内容及び貸借対照表を公告しなければならない(中小企業団体法一〇〇条の五第一項)。
  また、組合が組織変更の議決を行ったときは、当該議決の日から二週間以内に、組合の債権者に対し、組織変更に異議があれば一か月を下らない一定の期間内に、これを述べるべき旨を官報をもって公告し、 かつ、知れている債権者に対しては、各別にこの旨を催告しなければならない(中小企業団体法一〇〇条の五第二項、商法一〇〇条一項)。組合が組織変更について上記の公告及び催告をした後、債権者がその期間内に異議を述べなかった場合には、債権者は組織変更を承認したものとみなされるが(中小企業団体法一〇〇条の五第二項、商法一〇〇条二項)、 債権者が異議を述べた場合には、組合は、その者に対し弁済し、若しくは相当の担保を供し、又は信託会社に相当財産を信託しなければならない。ただし、 組織変更をしても、異議を述べた債権者を害するおそれのないときは、その必要はない(中小企業団体法一〇〇条の五第二項、商法一〇〇条三項)。

(3)組織変更後の会社の資本増加の限度額
  組織変更後の会社の資本の額は、組織変更時に組織変更前の組合に現に存する純資産額を上回ることができない(中小企業団体法一〇〇条の八第一項)。

三 組織変更の登記

(1)登記期間
  組合が、組織変更に必要な行為を終わったときは、 主たる事務所及び本店の所在地においては二週間以内に、従たる事務所及び支店の所在地においては三週間以内に、組織変更前の組合については中小企業等協同組合法第八八条(中小企業団体法五条の二三第五項において準用する場合を含む。)に規定する解散の登記を、組織変更後の会社については商法第一八八条第二項又は有限会社法第一三条第二項に規定する設立の登記をしなければならない(中小企業団体法一〇〇条の一一第一項)。

(2)登記事項
  組織変更による会社の設立の登記においては、株式会社にあっては商法第一八八条第二項に規定する事項、有限会社にあっては有限会社法第一三条第二項に規定する事項のほか、会社成立の年月日、組合の名称及び組織を変更した旨及びその年月日をも登記しなければならない(中小企業団体法一〇〇条の一一第三項、商登法七一条)。

(3)添付書類
  組織変更による会社の設立の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない(中小企業団体法一〇〇条の一一第二項)。なお、組織変更による組合の解散の登記の申請書には、添付書類を要しない(中小企業団体法一〇〇条の一一第三項、商登法七三条二項)。
ア 組織変更計画書(中小企業団体法一〇〇条の一一第二項一号)
イ 定款(中小企業団体法一〇〇条の一一第二項二号)
ウ 組合の総会の議事録(中小企業団体法一〇〇条の一一第二項三号)
工 組織変更の議決の公告をしたことを証する書面 (中小企業団体法一〇〇条の一一第二項四号)
オ 中小企業団体法第一〇〇条の五第二項において準用する商法第一〇〇条の規定による公告及び催告をしたこと並びに異議を述べた債権者があるときは、その者に対し弁済し、若しくは担保を提供し、又は信託したこと又は組織変更をしてもその者を害するおそれがないことを証する書面(中小企業団体法一〇〇条の一一第二項五号)
力 組織変更前の組合の現に存する純資産額を証する書面(中小企業団体法一〇〇条の一一第二項六号)
キ 会社の取締役、代表取締役及び監査役の就任を承諾したことを証する書面(中小企業団体法一〇○条の一一第二項七号)
ク 名義書換代理人又は登録機関を置いたときは、 これらの者との契約を証する書面(中小企業団体、法一〇〇条の一一第二項八号)
ケ 株式会社を設立するときは、代表取締役の選任に関する取締役会の議事録(商登法七九条一項)
コ 有限会社を設立するときは、社員総会議事録又は取締役の一致があったことを証する書面(商登法九四条)
サ 代理人により申請をするときは、その権限を証する書面(商登法一八条)

(4)登録免許税
  組織変更による会社の設立の登記の登録免許税は、 本店の所在地においてする登記については資本の金額の一〇〇〇分の七(登録免許税法別表第一、一九(一)ホ)、支店の所在地においてする登記については一件につき九〇〇〇円である(登録免許税法別表第 一、 一九(二)イ)。
  なお、組織変更による組合の解散の登記には、登録免許税は課されない。

(5)その他
ア 組織変更前による組合の解散の登記の申請と組織変更による会社の設立の登記の申請とは、同時にしなければならず、登記官は、これらの登記の申請のいずれかにつき、却下事由があるときは、 これらの登記の申請を共に却下しなければならない(中小企業団体法一〇〇条の一一第三項、商登法七三条)。
イ 資本の額を一〇〇〇万円未満とする組織変更による株式会社の設立の登記の申請又は資本の総額を三〇〇万円未満とする組織変更による有限会社の設立の登記の申請は、受理することができない。

四 組織変更無効の訴え

 組織変更の無効は、組織変更後の会社の本店の所在地において組織変更の日から六月内に限り訴えによってのみ主張することができるとされた(中小企業団体法一〇〇条の一六第一項)。
  この訴えは、組織変更後の会社の株主、取締役、監査役又は清算人に限り提起することができ(中小企業団体法一〇〇条の一六第二項、商法四一五条二項)、 組織変更により設立した会社の本店の所在地の地方裁判所の管轄に専属する(中小企業団体法一〇〇条の一六第二項、商法八八条)。
  組織変更を無効とする判決が確定したときは、受訴裁判所は、当該組織変更後の会社にあっては本店及び支店の所在地において解散の登記を、組織変更前の組合にあっては主たる事務所及び従たる事務所の所在地において回復の登記を、裁判の謄本を添付して嘱託しなければならない(中小企業団体法一〇〇条の一六第 二項、商法一〇八条、非訟事件手続法一三五条ノ六、 一四〇条)。