中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律等の施行に伴う登記事務の取扱いについて
平成十年十月二十二日付け法務省民四第二〇五〇号民事局長通達
(通達)中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成一〇年法律第九〇号。以下「法」という。)、 中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律施行令(平成一〇年政令第二三五号。以下「政令」という。) 及び中小企業等投資事業有限責任組合契約登記規則(平成一〇年法務省令第四七号。以下「規則」という。)が、 本年一一月一日から施行されることとなったが、これに伴う商業・法人登記事務の取扱いについては、下記の点に留意し、事務処理に遺憾のないよう、この旨貴管下登記官に周知方取り計らわれたい。
なお、本通達中、「商登法」とあるのは商業登記法を、 「登税」とあるのは登録免許税法を、「商登規」とあるの は商業登記規則をそれぞれいうものとする。
記
第一 中小企業等投資事業有限責任組合契約制度の創設
中小企業等投資事業有限責任組合契約は、法に基 づき、各当事者が出資を行い、共同で中小企業等に対する投資事業の全部又は一部を営むことを約する ことにより、その効力を生ずる組合契約であって (法三条)、無限責任組合員と有限責任組合員との別を約するものである(法一条)。 法は、組合契約に関する制度を確立することによ り、円滑な資金供給を通じた中小企業等の自己資本の充実を促進し、その健全な成長発展を図り、もつて我が国の経済活力の向上に資することを目的とす るものである(法一条)。 中小企業等投資事業有限責任組合契約(以下「組 合契約」という。)が効力を生じた場合には、所定の 期間内に法第一七条に定める事項を登記しなければならないこととされ、法の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することはできず、また、故意又は過失により不実の事項を登記した者は、その事項 が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができないこととされた(法四条)。
第二 組合契約の登記
一 組合契約の効力発生の登記
(1)組合契約 組合契約の効力は、法第三条第一項各号に掲げ る事業の全部又は一部を営むことを約することにより発生する(法三条一項)。契約締結に当たり、 各組合員は、中小企業等投資事業有限責任組合契約書(以下「組合契約書」という。)に、次の事項を記載して署名し、又は記名押印しなければなら ない(法三条二項)。
ア 組合の事業
組合契約の制度は、中小企業等に対する投資 事業を行うことによって、その健全な成長発展を図るという法の目的を実現するために創設さ れたものであるので、法は、中小企業等投資事 業有限責任組合(以下「組合」という。)の行うべき事業を特定し、これら以外は、追認があっ た場合においても、組合の行為として認めないこととしている(法三条一項、七条四項、政令 二条)。 法により認められた組合の事業のうち主要な ものは次のとおりである。
(ア)中小企業等の設立に際して発行する株式の取得及び保有
(イ)中小企業等の発行する株式、転換社債(その転換により発行された株式を含む。以下同 じ。)又は新株引受権付社債の取得及び保有
(ウ)(ア)及び(イ)により組合がその株式、転換社債又は新株引受権付社債を保有している株式会社(中小企業等を除く。(エ)において同じ。)の発行する株式、転換社債又は新株引受権付社債の取得及び保有
(エ)中小企業等又は(ウ)の株式会社の所有する工業所有権又は著作権の取得及び保有(これら の権利に関して利用を許諾することを含む。)
(オ)(ア)から(エ)までにより組合がその株式、転換 社債、新株引受権付社債、工業所有権又は著作権を保有している株式会社に対して経営又は技術の指導を行う事業
(カ)次の事業であって、次の①による取得及び ②による出資の価額の合計額の総組合員の出資の総額に対する割合が一〇〇分の五〇に満 たない範囲内において、(ア)から(オ)までの事業 の遂行を妨げない限度において行うもの
①外国法人であって、その発行する株式が 証券取引法第二条第一一項に規定する証券取引所及びこれに類似するものであって外国に所在するものに上場されておらず、かつ、同法第七五条第一項の店頭売買有価証券登録原簿及びこれに類似するものであっ、て外国に備えられるものに登録されていな いものの発行する株式、転換社債、新株引 受権付社債又はこれらに類似するものの取 得及び保有
② 組合又は外国に所在する組合に類似する団体に対する出資
(キ)組合契約の目的を達成するため、政令で定 める方法により行う業務上の余裕金の運用
イ 組合の名称
組合には、その名称中に投資事業有限責任組 合という文字を用いなければならない(法五条 一項)。また、その名称の登記は、同市町村内に おいては、同一の事業のため他人が登記したも のと判然区別することができないときは、することができない(法三三条、商登法二七条)。 なお、何人も、組合でないものについて、その名称中に投資事業有限責任組合という文字を用いてはならない(法五条二項)。
ウ 組合の事務所の所在地
組合が従たる事務所を設けるときは、従たる 事務所の所在地を含む。
工 組合員の氏名又は名称及び住所並びに無限責任組合員と有限責任組合員の別
組合員は、自然人に限らず、法人である場合 もあり得る。なお、組合員の数の合計は、四九人を超えてはならない(法三条四項、政令四条)。
オ 出資一口の金額
組合員は、出資一口以上を有しなければなら ず(法六条一項)、出資一口の金額は、均一でな ければならない(法六条三項)。
力 組合契約の効力が発生する年月日
キ 組合の存続期間
(2) 組合契約の効力発生の登記の手続
ア 登記期間
無限責任組合員は、組合契約が効力を生じた ときは、その日から、主たる事務所の所在地に おいては二週間以内に、従たる事務所の所在地 においては三週間以内に下記イの事項を登記し なければならない(法一七条、二六条一項)。
イ 登記すべき事項 登記すべき事項は次のとおりである(法一七条二項)。
(ア)組合の事業
(イ)組合の名称
(ウ) 組合契約の効力発生年月日
(エ) 組合の存続期間
(オ) 無限責任組合員の氏名又は名称及び住所
(カ) 組合員の数の合計
(キ) 組合の事務所
(ク)組合契約で第一三条第一号から第三号まで に掲げる事由以外の解散の事由を定めたとき は、その事由
ウ 申請人
組合契約の効力発生の登記は、無限責任組合員の申請によってする(法二六条一項)。
工 申請書 登記の申請は書面でしなければならないこと等は、商業登記の場合と同様である(法三三条、 商登法一七条)。 申請書に記載すべき登記すべき事項は、登記用紙と同一の用紙に記載しなければならないが (規則九条、商登規六八条一項)、この登記用紙の様式は、規則付録で示されたとおりである。
オ 添付書面
主たる事務所の所在地においてする組合契約 の効力の発生の登記の申請書に添付すべき書類 は、次のとおりである(法二六条二項、二七条、 法三三条、商登法一八条、規則七条)。
(ア) 組合契約書
(イ) 登記の申請をする無限責任組合員が法人で あるときは、当該法人の代表者の資格を証する書面 当該法人が登記された登記所に登記の申請 をする場合であって、当該法人の登記簿から 当該代表者の資格を確認することができるときは、申請書に当該法人の代表者の資格を証する書面の添付がなくとも、受理して差し支えない。
(ウ)(ア)の組合契約書の無限責任組合員の印鑑に つき市区町村長の作成した証明書(無限責任 組合員が法人であるときは、登記所の作成した代表者の資格を証する書面及び当該代表者 の印鑑につき登記所の作成した証明書) 無限責任組合員が法人であって当該法人が登記された登記所に登記の申請をする場合に おいて、組合契約書の印鑑と当該法人の代表者が登記所に提出している印鑑とが同一であって、当該法人の登記簿から当該代表者の資 格を確認することができるときは、申請書に代表者の資格を証する書面及び印鑑の証明書の添付がなくとも、受理して差し支えない。
(エ)代理人によって申請する場合は、代理権限 を証する書面
従たる事務所の所在地においてする組合契 約の効力の発生の登記の申請書には、主たる事務所の所在地においてした登記を証する書面を添付すれば足り、他の書面の添付を要し ない(法三三条、商登法五六条二項)。
力 登記の記載
組合契約の効力の発生の登記の記載は、別紙記載例による。
二 名称、事業、存続期間又は解散の事由の変更の登 記
(1) 名称、事業、存続期間又は解散の事由の変更の手続
名称、事業、存続期間又は解散の事由は、組合契約書の記載事項であるから(法三条二項一号、 二号、七号、一三条四号)、これを変更するには、 組合契約を変更しなければならず、そのためには、 総組合員の合意が必要である。
(2)名称、事業、存続期間又は解散の事由の変更の登記の手続
ア 登記期間 無限責任組合員は、登記すべき事項に変更を 生じたときは、その日から、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、支店の所在地に おいては三週間以内に、変更の登記をしなければならない(法二〇条、二六条一項)。
イ 添付書面
申請書には、登記事項の変更を証する書面を 添付しなければならず、さらに、登記の申請をする無限責任組合員が法人であるときは、当該 法人の代表者の資格を証する書面をも添付しな ければならない(法二六条二項、二八条)。 組合契約の変更は、総組合員の合意によってするので、通常の場合、登記事項の変更を証する書面としては、組合契約に係る変更契約書を添付すればよい。この場合、登記簿、登記申請書及び添付書面だけからは、契約書中の組合員 の署名の真正を確認することができないことと なるが、そのような場合であっても、当該変更契約書中の署名の数が登記されている組合員の数の合計と同数であれば、当該登記の申請を受理して差し支えない。 なお、登記の申請をする無限責任組合員が法人である場合の当該法人の代表者の資格を証す る書面及び代理人によって申請する場合の代理権限を証する書面の取扱いは、組合契約の効力発生の登記の場合(一の(2)のオの(イ)及び(エ))と 同様である。
三 主たる事務所移転の登記
(1)主たる事務所移転の手続
主たる事務所の移転については、組合契約の変 更を要する場合は、総組合員の合意により、組合契約の変更を要しない場合は、無限責任組合員の 決定(無限責任組合員が数人ある場合には、無限 責任組合員の過半数をもって決定する(法七条二 項)。以下同じ。)による。 いずれの場合においても、具体的な主たる事務 所の移転場所、時期等は、無限責任組合員が決定 する。
(2)主たる事務所移転の登記の手続
ア 登記期間等
無限責任組合員は、組合がその主たる事務所 を同一登記所の管轄区域内に移転したときは、 その日から、主たる事務所の所在地においては 二週間以内に移転の登記を(法一九条)、従たる事務所の所在地においては三週間以内に主たる事務所移転による変更の登記をしなければな らない(法二〇条)。 組合がその主たる事務所を他の登記所の管轄 区域内に移転した場合において、移転後の主たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域 内に既存の従たる事務所がないときは、その日から二週間以内に、旧所在地においては移転の登記を、新所在地においては法第一七条に掲げる事項並びに主たる事務所を移転した旨及びそ の年月日を登記しなければならない(法一九条 一項、法三三条、商登法五九条、五六条三項)。 移転後の主たる事務所の所在地を管轄する登記 所の管轄区域内に既存の従たる事務所があると きは、新所在地においては、主たる事務所の移転の登記をすれば足りる。 組合がその主たる事務所を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記の申請及び印鑑の提出は、旧所在地を管轄する登記所を経由してしなければならず、かつ、こ の登記の申請は旧所在地における登記の申請と同時にしなければならない(法三三条、商登法 五七条一項、二項)。 また、従たる事務所の所在地においては、移 転の日から三週間以内に主たる事務所移転によ る変更の登記をしなければならない(法二〇条)。
イ 添付書面
申請書には、主たる事務所の移転を証する書 面を添付しなければならない(法二八条)。 具体的な移転場所、移転時期等は、無限責任 組合員の決定によるので、移転を証する書面と しては、これに関する無限責任組合員の決定があったことを証する書面を添付すればよい。 また、組合契約の変更を要する場合には、登記事項の変更を証する書面として、組合契約に係る変更契約書をも添付しなければならない。 この変更契約書の署名については、二の(2)のイ と同様に取り扱って差し支えない。 なお、登記の申請をする無限責任組合員が法人である場合の当該法人の代表者の資格を証す る書面及び代理人によって申請する場合の代理 権限を証する書面の取扱いは、組合契約の効力発生の登記の場合(一の(2)のオの(イ)及び(エ))と 同様である。
四 従たる事務所の設置、移転及び廃止の登記
(1) 従たる事務所の設置、移転又は廃止の手続
従たる事務所の設置、移転又は廃止については、 主たる事務所の移転と同様、組合契約の変更を要する場合は、総組合員の合意により、組合契約の変更を要しない場合は、無限責任組合員の決定による。 いずれの場合においても、具体的た従たる事務所の移転場所、時期等は、無限責任組合員が決定する。
(2)従たる事務所設置の登記の手続
ア 登記期間等
無限責任組合員は、組合契約の効力の発生の 登記後に従たる事務所を設けたときは、その日から、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、他の従たる事務所の所在地においては三週間以内に、従たる事務所を設けたことを登記し、当該従たる事務所の所在地においては三週間以内に、法第一七条に掲げる事項並びに従たる事務所を設けた旨及びその年月日を登記しなければならない(法一八条一項、二項、法三 三条、商登法五六条三項)。従来の主たる事務所又は従たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内に新たに従たる事務所を設けたと きは、その従たる事務所を設けたことを登記すれば足りる(法一八条二項)。
イ 添付書面
申請書に添付すべき書面は、三の(2)のイと同 様である。
(3)従たる事務所移転の登記の手続
ア 登記期間等
無限責任組合員は、組合が従たる事務所を移 転したときは、その日から、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、他の従たる事務所の所在地においては三週間以内に、従たる事 務所移転による変更の登記をしなければならない(法一九条一項)。そして、当該従たる事務所の旧所在地においては三週間以内に、従たる事務所移転による変更の登記をし、新所在地においては、四週間以内に法第一七条に掲げる事項 並びに従たる事務所を移転した旨及びその年月日を登記しなければならない(法一九条一項、 法三三条、商登法五六条三項)。ただし、従たる事務所を同一の登記所の管轄区域内において移転したとき及び従たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内に主たる事務所又は従たる事務所があるときは、当該従たる事務所の所在地においては、移転の登記をすれば足りる (法一九条二項)。
イ 添付書面
申請書に添付すべき書面は、三の(2)のイと同 様である。
(4) 従たる事務所廃止の登記の手続
ア 登記期間等
無限責任組合員は、組合が従たる事務所を廃 止したときは、その日から、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の 所在地においては三週間以内に従たる事務所廃止による変更の登記をしなければならない(法 二〇条)。
イ 添付書類
申請書に添付すべき書面は、三の(2)のイと同様である。
五 無限責任組合員に関する変更等の登記
(1)無限責任組合員に関する変更
無限責任組合員は、組合契約書の記載事項であ るから(法三条二項四号)、新たな無限責任組合員が組合に加入するには、総組合員の合意により 組合契約の変更をしなければならない。 無限責任組合員は、正当の事由がなければ、辞任することができず、また解任されることもない (法一六条、民法六七二条一項)。正当の事由に よって解任するには、他の組合員の一致が必要である(法一六条、民法六七二条二項)。 無限責任組合員は、やむを得ない場合には、そ の意思により脱退することができ、また、死亡、 破産、禁治産又は除名により、当然に脱退する (法一六条、民法六七二条一項、六七八条、六七 九条)。
(2)無限責任組合員に関する変更の登記の手続
ア 登記期間等
無限責任組合員は、無限責任組合員に関して 変更があったときは、その日から、主たる事務 所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に変更の登記をしなければならない(法二〇条)。 なお、無限責任組合員の加入又は脱退により組合員の数の合計に変更が生じた場合には、組合員の数の合計の変更をもしなければならない (同条)。
イ 添付書面
申請書には、登記事項の変更を証する書面を 添付しなければならない(法二八条)。 組合契約の変更を要する場合には、組合契約に係る変更契約書が登記事項の変更を証する書面となる。この場合の取扱いは、二の(2)のイと 同様である。 また、無限責任組合員の加入による変更の登記の申請書には、変更契約書の無限責任組合員の印鑑につき市区町村長の作成した証明書(無限責任組合員が法人であるときは、登記所の作成した代表者の資格を証する書面及び当該代表 者の印鑑につき登記所の作成した証明書)を添付しなければならたい(規則七条)。この証明 書の取扱いについては、加入する無限責任組合員についてのみ添付を要することとし、従前の無限責任組合員については添付を要しない。また、加入する無限責任組合員が法人であって当該法人が登記された登記所に登記の申請をする場合において、登記事項の変更を証する書面の印鑑と当該法人の代表者が登記所に提出してい る印鑑とが同一であって、当該法人の登記簿から当該代表者の資格を確認することができると きは、申請書に代表者の資格を証する書面及び印鑑の証明書の添付がなくとも、受理して差し支えない。 なお、登記の申請をする無限責任組合員が法人である場合の当該法人の代表者の資格を証す る書面及び代理人によって申請する場合の代理権限を証する書面の取扱いは、組合契約の効力 発生の登記の場合(一の(2)のオの(イ)及び(エ))と 同様である。
(3) 組合員の数の合計の変更
無限責任組合員又は有限責任組合員の加入又は脱退により、組合員の数は当然に変更される。 登記の手続は、五の(2)と同様である。この場合には、無限責任組合員又は有限責任組合員の加入又は脱退したことを証する書面が、登記事項の変更を証する書面となる。
六 無限責任組合員の業務執行停止等の登記
無限責任組合員について、その職務の執行を停止 し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされた場合には、主たる事務所及び従たる事務所の所在地においてその登記をしなければな らない(法三三条)。この登記は、裁判所書記官の嘱 託による(法三三条、民事保全法五六条)。
七 解散の登記及び清算人に関する登記
(1)解散の原因
組合は、次の事由によって解散する(法一三条)。
ア 目的たる事業の成功又はその成功の不能
イ 無限責任組合員又は有限責任組合員の全員の脱退
この場合であっても、その事由が生じた日か ら二週間以内であって解散の登記をする日まで に、残存する組合員の一致によって新たに無限責任組合員又は有限責任組合員を加入させたと きは、解散しない(法一三条ただし書)。
ウ 存続期間の満了
工 組合契約でアからウまでに掲げる事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由の発生
(2)解散の登記の手続
ア 登記期間
清算人は、組合が解散したときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に、解散の登記をしなければならたい(法二二条)。
イ 登記すべき事項
登記すべき事項は、解散の旨、その事由及び年月日である(法三三条、商登法六一条一項)。
ウ 添付書類
申請書には、解散の事由を証する書面を添付 しなければならない(法二九条)。 無限責任組合員又は有限責任組合員の全員の脱退により解散した場合において無限責任組合員全員の脱退の登記又は組合員の数の合計の変更の登記と同時に解散の登記が申請されたとき は、別途解散の事由を証する書面を添付するこ とを要しない。また、登記された存続期間の満了による解散の場合には、そのことが登記簿上明らかであるから、書面を添付する必要はない。 なお、登記の申請をする清算人が法人である場合の当該法人の代表者の資格を証する書面及び代理人によって申請する場合の代理権限を証 する書面の取扱いは、組合契約の効力発生の登 記の場合(一の(2)のオの(イ)及び(エ))と同様であ る。
(3)清算人の就任及び解任等
組合が解散したときは、無限責任組合員がその清算人となる。ただし、総組合員の過半数をもつ て他人を選任したときは、この限りでない(法一 四条)。 清算人は、正当の事由がなければ、辞任するこ とができず、また解任されることもない(法一六 条、民法六八七条、六七二条一項)。正当の事由に よって解任するには、他の組合員の一致が必要である(法一六条、民法六八七条、六七二条二項)。 清算事務の執行は、清算人がこれを行うが、清算人が数人あるときは、その過半数をもって決する(法一五条、七条二項)。
(4)清算人の就任等による変更の登記の手続
ア 登記期間等
無限責任組合員が清算人となったときは、解散の日から、主たる事務所の所在地においては 二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に、清算人の氏名又は名称及び住所を登記しなければならない(法二三条一項)。 総組合員の過半数をもって選任された清算人は、選任の日から、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に、清算人の氏名又は名称及び住所を登記しなければならない(法二三条 二項)。 なお、清算人は、登記事項に変更を生じたときは、その日から、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、支店の所在地においては 三週間以内に、変更の登記をしなければならない(法二三条、二〇条)。
イ 登記すべき事項
登記すべき事項は、清算人の氏名又は名称及 び住所である。
ウ 添付書面
申請書に添付すべき書類は、次のとおりであ る(法三〇条、三一条)。
(ア)総組合員の過半数をもって選任した場合に は、総組合員の過半数の一致があったことを 証する書面
(イ)清算人の退任による変更の場合には、退任を証する書面
(ウ)清算人の氏名又は名称及び住所の変更の場合には、登記事項の変更を証する書面 なお、登記の申請をする清算人が法人である場合の当該法人の代表者の資格を証する書面及び代理人によって申請する場合の代理権限を証 する書面の取扱いは、組合契約の効力発生の登記の場合(一の(2)のオの(イ)及び(エ))と同様であ る。
八 清算人の業務執行停止等の登記
清算人について、その職務の執行を停止し、若し くはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又 はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定 がされた場合には、主たる事務所及び従たる事務所の所在地においてその登記をしなければならない (法二三条三項、二一条)。この登記も、裁判所書記官の嘱託による(法三三条、民事保全法五六条)。
九 清算結了の登記
(1)清算結了の手続
清算事務が終了したときは、組合財産の処分が 完了したことについて、総組合員の承諾を得なければならない。
(2)清算結了の登記の手続
ア登記期間等
清算人は、組合の清算が終了したときは、清算結了の日から、主たる事務所の所在地におい ては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に、清算結了の登記をしなければならない(法二四条)。
イ 登記すべき事項
登記すべき事項は、清算を結了した旨及びそ の年月日である。
ウ 添付書類
申請書には、組合財産の処分が完了したことを証する総組合員が作成した書面を添付しなけ ればならない(法三二条)。 なお、登記の申請をする無限責任組合員が法人である場合の当該法人の代表者の資格を証する書面及び代理人によって申請する場合の代理権限を証する書面の取扱いは、組合契約の効力 発生の登記の場合(一の(2)のオの(イ)及び(エ))と 同様である。
一〇 その他の登記等
更正の登記及び抹消の登記については、商業登記 の場合と同様である。 なお、組合契約については、合併に関する登記、 継続の登記、破産に関する登記及び和議に関する登記は、存しない。
一一 登録免許税
法附則第三条により登税の一部が改正され、組合 契約の登記の登録免許税に関する規定が新設された。 すなわち、組合契約の登記に関する登録免許税の額 は、主たる事務所の所在地においてする①組合契約 の効力発生の登記については、一件につき一万八千円、②登記の更正又は抹消の登記(清算に係る登記 を除く。)については、一件につき六千円、③上記以 外の登記(清算に係る登記を除く。)については、一件につき九千円である(登税九条、別表一、二十二 の二(一))。従たる事務所の所在地においてする登記 (清算に係る登記を除く。)については、一件につき二千円である(登税九条、別表一、二十二の二(二))。 また、主たる事務所又は従たる事務所の所在地にお いてする①清算人の登記については一件につき二千 円、②清算に係る①以外の登記については、一件につき千円である(登税九条、別表一、二十二の二 (三))。
第三 その他
一 印鑑に関する事務
(1) 印鑑の提出
登記の申請書に押印すべき者は、商業登記の場 合と同様、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出 しなければならない(法三三条、商登法二〇条)。 印鑑の提出は、当該印鑑を明らかにした書面を もってしなければならず、印鑑を提出する者は、その書面に法第三条第一項各号に掲げる事項のほか、氏名、住所、年月日及び登記所の表示を記載 し、押印しなければならない(規則三条一項)。規則第三条第一項各号に掲げる事項は、商登規でい う印鑑届出事項に相当するものであり、無限責任 組合員又は清算人が法人である場合には、①組合 の名称、②組合の主たる事務所、③無限責任組合 員又は清算人の資格、④無限責任組合員又は清算 人である法人の商号又は名称及び本店又は主たる 事務所、⑤無限責任組合員又は清算人の代表者としての資格、氏名及び出生の年月日である。 印鑑届書の添付書面は、規則第三条第二項の各号に掲げる印鑑を提出する者の区分に応じ、それぞれ各号に定める書面を添付しなければならない (規則三条二項)。この規定は、商登規第九条第五 項に相当するものであり、無限責任組合員又は清算人が法人である場合には、印鑑提出者が現に当 該法人の代表者の資格を有していることを確認する必要があることから、①当該法人の代表者であ ることの資格証明書及び②当該法人の代表者とし て提出した印鑑の印鑑証明書でいずれも作成後三月以内のものを印鑑届出書に添付しなければなら ない。しかし、無限責任組合員又は清算人である 法人が登記された登記所に印鑑を提出する場合において、既に当該法人の代表者としてその登記所 に提出している印鑑を印鑑届書に押印したときは、 登記官とLては、登記簿の記載及び届出済みめ印 鑑によりその者の当該法人の代表者としての資格 及び印鑑を確認することができるから、添付書面 は不要である(規則三条二項二号上段括弧書)。
(2)印鑑カードの交付の請求
印鑑の提出をした者が印鑑カードの交付の請求 をすることができることは、商業登記の場合と同様である(規則九条、商登規九条の四第一項前段)。 無限責任組合員又は清算人である法人の代表者 が印鑑カードの交付の請求をするときは、印鑑力 ード交付申請書に登記所の作成したその者に係る代表者の資格を証する書面で作成後三月以内のも のを添付しなければならない(規則四条)。ただ し、無限責任組合員又は清算人である法人が登記 された登記所に印鑑カードの交付の請求をすると きは、印鑑の提出の場合と同様、添付書面は不要である(規則四条ただし書)。
(3)印鑑証明書の交付の請求
印鑑の提出をした者が印鑑の証明を請求するこ とができることは、商業登記の場合と同様である (法三三条、商登法一二条)。 無限責任組合員又は清算人である法人の代表者 が印鑑の証明の請求をするときの印鑑証明書交付申請書に添付する登記所の作成したその者に係る代表者の資格を証する書面の取扱いは、印鑑カー ドの交付の請求の場合と同様である(規則四条)。
二 登記簿等の閲覧の請求
商業登記の場合と同様、何人でも、手数料を納付 して、登記簿の閲覧及び利害関係がある部分についての登記簿の附属書類の閲覧を請求することができ る(法三三条、商登法一〇条)。 しかし、商業登記の場合と異なり、登記簿の附属書類の閲覧の申請書には、利害関係を明らかにする事由を記載しただけでは足りず、更に、利害関係を証する書面を添付しなければならない(規則五条)。 利害関係を証する書面とは、例えば、組合に対する執行力がある債務名義の正本及び申請人の印鑑の証 明書であって市区町村長の証明したものがこれに該当する。
三 登記申請事件以外の事務の取扱い
その他組合契約に関する登記申請事件以外の事務 の取扱いは、商業登記に関する事務と同様である。
四 受付帳及び受付番号
登記官は、組合契約に関する登記の申請書を受け 取ったときは、受付帳に登記の種類、申請人の氏名、 会社が申請人であるときはその商号、受付の年月日 及び受付番号を記載し、申請書に受付の年月日及び 受付番号を記載しなければならないが(法三三条、 商登法二一条)、この受付帳及び受付番号の取扱い については、組合契約を会社以外の法人として取り扱って差し支えない。
五 その他
商業登記等事務取扱手続準則(昭和三九年三月一 一日民事甲第四七二号当職通達)は、その性質に反 しない限り、組合契約に関する登記事務の取扱いに 準用する。