弁護士法第二三条の二に基づく照会(予告登記に係る訴訟に勝訴した原告が登記申請をしない場合の予告登記の抹消登記手続) について
平成十一年七月二十九日11-1330号第一東京弁護士会会長照会、平成十二年一月二十一日付け法務省民三第一三〇号民事局第三課長回答
(照会)甲から乙への所有権移転登記がされている不動産につき、甲が乙に対し所有権移転登記の抹消登記手続請求訴訟を提起したため、所有権の抹消予告登記がされているが、甲は確定した勝訴判決を得たにもかかわらず任意に登記申請をしないため、予告登記は抹消されていない。 このような不動産について、競売による売却を原因とする所有権移転登記がされた場合の予告登記の取扱いについては、下記の二つの説のうち、甲説を相当と考えますが、貴見を御教示いただきたい。
記
(甲説)
登記簿上の記載から既に無意味となったことが明らかな予告登記を残存させることは、競売手続の円滑を阻害するとともに、その後の実体法上の取引にとって無用の 混乱等を誘発させることとなり、また、これを抹消してもいかなる者の権利を侵害するおそれもないことから、 かかる場合には不動産登記法一四九条を準用して、登記官の職権により予告登記を抹消すべきである。
(乙説)
民事執行法八二条を準用して、執行裁判所の嘱託により抹消する。
(回答)客年七月二九日付け11-1330号をもって照会のあった標記の件について、下記のとおり回答します。
記
照会に係る事案の場合に、登記官が職権によって予告登記を抹消することができるのは、確定した勝訴判決に基づく甲の申請により、甲から乙への所有権移転登記を抹消したときに限られます(不動産登記法第一四五条第三項)。
なお、甲が上記の勝訴判決に基づいて取得した登記の抹消を請求する権利を放棄したことを証する書面を、甲又は乙若しくは予告登記の抹消について利害関係を有する登記名義人等が裁判所書記官に提出した場合には、裁判所書記官の嘱託により予告登記が抹消されることになります(不動産登記法第一四五条第二項)。